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ボタンは何故シャクヤクの台木に接ぎ木されているのか?

ボタン、八千代椿

現代では美しい豪華な花は目移りするほど、たくさんあります。しかし江戸時代以前には園芸どころではなく、現代人の目から見て、それほど感動する花はありません。ボタン(牡丹)はその数少ないもののひとつですが、古く奈良時代に渡来してはいたものの、庶民の目にとまる存在ではありませんでした。園芸という楽しみが始まるのはやはり太平の世が続く江戸時代を待たねばなりません。この時代になりボタン、シャクヤクは大いに改良、作出が進み、初めてこの花が庶民のものとなったのです。
『立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花』
美人の例えに使われるほど、シャクヤクやボタンは美しい花です。上の写真のボタン、八千代椿をご覧ください。見れば見るほどため息が出ます。現代では新しい交配が行われ華麗な花が次々と作出され、安価に庶民のもとに届けられています。 さて本題に入ります。
このボタンはシャクヤクに接ぎ木されていますが、これはなぜだか御存じでしょうか?これが本ページのテーマです。
普通、接ぎ木はバラ苗に見るように耐病性のある品種を台木にして、強健な苗をを作るのが目的です。この場合、植えつけにおいては、接ぎ目を地際より高くします。そうしないと肝心の穂木のバラから根が出て、接ぎ木の意味がなくなるためです。ところがボタンでは深植え(継ぎ目を地際より下、つまり埋めてしまう)が正しい植え方です。これは何故でしょう? これについて、素人がいろいろ議論しましたが、生産者でもない者に分かるわけはありません。これについては、つてをたどり千葉大学園芸学部の松原先生に教えていただきました。以下、先生の回答をそののまま掲載します。


ボタンの深植えとバラについて

ボタンの流通苗はシャクヤクの台木に接ぎ木したものがほとんどです。ボタンは木本植物なので種子を播いて生産をすると開花までとても時間がかかってしまい、またボタンを台木として接いでも、台木の生産性が低いので、最終的なボタンの苗の生産性が低くなってしまい営利生産ができません。一方、シャクヤクはボタンと同じボタン科Paeonis属の植物ですが、草本性の植物なので種子を播いて育てても、すぐに大きく育てることができます。この特性を利用して、種子から育てたシャクヤクを台木としてボタンを接ぐことで、ボタンが早く開花まで到達する大きさになって、生産性もあげることができます。ただしシャクヤクを台木とすると、シャクヤクは草本性なので、数年で枯れてしまうことがあります。台木が枯れてしまうと穂木のボタンも枯れてしまうので、これを方法として、接ぎ木の部分よりやや上まで土で覆って、ボタンから自根の根を出させるようにします。ボタンから自根が出てくれば、台木のシャクヤクが枯れても、ボタンはしっかり生き残ることができます。このような理由から、接ぎ木苗のボタンを植える場合は、深めに植えつけ、順次土増しをして自根を出させるようにします。 バラの場合は、台木に大抵ノイバラ(日本で作っているものは)を使っています。ノイバラは品種バラに比べて大変強健ですので、もし接ぎ木のバラを深植えして自根を出させてしまうと、株が弱くなってしまいます。なので、バラの場合は、深植えをせずに、そのまま台木の根を利用して育てるのが一番です。ちなみに野菜の接ぎ木も同じ理由で、自根よりも強健な台木の根を利用することで、病気にも強くなったりします。 ボタンの接ぎ木は生産性を上げるためで、バラの接ぎ木は苗を強健にするためというわけです。

シャクヤクの台木に接がれたボタン
※松原先生は現在、千葉大を退職され、ご実家の花卉生産事業の道で、活躍されています。

2018年08月18日
観葉植物(インテリアグリーン)のポトス
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