ノウゼンカズラの驚くべき生命力

ノウゼンカズラは古く中国から渡来した植物ですが、今では日本のどこでも見られるありふれた夏の花です。このツル性植物はすこぶる夏の暑さに強く、2010年の猛暑の中でも次から次へと花を咲かせてくれています。中国名で凌霄花(りょしょうか)と言いますが、空をしのぐ、あるいは空に昇る花という意味です。その名の通り、塀や木の枝に絡まりながら上へ上へとツルを伸ばしてゆきます。2階の物干し台など、なんのその、もっと高い場所にも登ります。 例年になくあちこちで元気に咲くノウゼンカズラの花を見ていて、以前に本で読んだ電信柱に登ったノウゼンカズラの話を思い出しました。この話は関西地方では、テレビでご覧になった方もいらっしゃるでしょう。2005年に奈良県田原本町(たわらもとちょう)で起こった珍しい出来事です。ここでは話のあらましを、ご紹介しますので詳細を知りたい方は『入門 たのしい植物学』(講談社ブルーバックス、田中修著)を、お読みなってください。
天空のノウゼンカズラ事件

2005年6月に地元の中学生からABC朝日放送テレビに次のような疑問が寄せられました。『十数メートルはあろうかと思える電信柱の上部に緑の葉が茂りオレンジ色の花がたくさん咲いている。しかし電柱に登るツルが見えない。これは一体どうなっているのだろう?』と。確かに、高いところにツルをからませて登るだけなら何も珍しいことではありません。でもここではツルが全く見えないというのです。しかもコンクリートの電柱は電力会社によれば中空ではあるものの両端(電柱のてっぺんと地下の底)はふさがっているとのこと。ではどこから、あのノウゼンカズラの群落は水を吸い、生きているのか?『天空のラピュタ』ではあるまいし雨水だけで生きているとは考えられません。 色々調査が行われた結果、次のような解答が得られました。そして天空のノウゼンカズラの群落は伐採撤去されたのです。
電柱のアース線用の穴から内部に根が入り頂上に登った
コンクリート電柱にはアース線を通すための穴が地下埋設部と頂上に近い側面に開いているそうです。穴径については言及されていませんが直径1〜2cm位のものではないでしょうか。この話題が出る以前、電柱の近くにノウゼンカズラが植栽されていましたが、2005年には既に枯れて切り株だけが残っていたそうです。そのノウゼンカズラが元気な頃、その地下にあった根の一部がたまたま使用されなかったアース線用の穴から電柱内に入り込み、そこから、電柱上部の穴からわづかに漏れる光を感じ、根が発芽し頂上に向けて登って行ったらしいのです。その光の強さたるや、星の光ほどもなかったでしょう。そして上部のアース線の出口の穴から外に出るや、太陽をさんさんと浴び、大きく枝葉を伸ばしていったのです。自然の奇跡といっても過言ではありません。それにしても、十数メートルも水を吸い上げるノウゼンカズラの力はどこから来るのでしょう。一旦、芽が電柱の外に出てからは蒸散作用が旺盛になるので、わからなくもありませんが暗黒の電柱内を登る過程ではどういう作用が働いていたのでしょうか。模式図を参考のため作成しました。 ともあれ、やっとの思いで電線に這い上ったノウゼンカズラは電線に絡むと被覆を傷つけるということで、かわいそうに伐採除去されてしまいました。





